展覧会の紹介

現代 2002年4月27日〜6月23日
芸術の森美術館(南区芸術の森2)

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 札幌の芸術の森美術館が企画したオリジナルの現代美術展。
 瑛九の1950年作のフォトデッサンから、伊藤隆介の新作まで、50年余りの作品にしぼっている。
 出品作家も、海外、国内、道内とバランスよくおりまぜている。
 国内のコレクションだけでここまで作品を集めることができるようになったのか、と感慨。

 いわゆる「版画展」ではない、という説明は、ずいぶんあちこちで読んだ。
 「版」という見方で、美術を見てみようという美術館からの提案だとおもう。
 コピー、とか、プリントと言いかえてもかまわないだろう。
 もっとも、「街の風景を描く」ことまで、頭の中で行われる「版」の作用といえる−とまでいわれると、ちょっと範囲を広げすぎかなあ、という気がしないでもない。
 そこまでいうと、泰西名画をふくむほとんどすべての美術作品が「版」作品になってしまう。

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 「版画展」ではないといったけど、じつはかなりの数の版画が出品されている。
 87点のうち、シルクスクリーンやリトグラフなどの版画が34点。ほかに、オフセット印刷が3点、写真やレーザープリンタ出力を利用した作品が18点。
 このほか、コピーを利用した作品もあるので、複製で作られたものが、合計すると楽に半数を超えてしまうのである。
 これは、国内の美術館がカネがないため、海外の作家の作品を買おうとするとどうしても版画が多くなってしまうという事情も手伝ってはいるが、それよりむしろ、現代美術において版画や写真といった手段がどれだけ重要になってきているかをしめしているのではないだろうか。

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 同時におもったのは、現代美術ってアイデア勝負だよなー、ってことである。
 手わざから着想を重視するようになったのは、なんといってもマルセル・デュシャンの影響が大きいんだろうな。
 アイデア勝負の作品の弱点は、ともすると、アイデアを取ったらなにものこらなくなること。朝日新聞記者・大西若人さんの名言をつかえば「解釈オチ」ってやつ。
 この展覧会にもいくつかありましたね。楽譜で音楽家の顔をあらわした版画とか。おもしろいけど、ただそれだけ。とても再見にたえない。
 アイデアが個性的で、なおかつ深く考えさせられる作品ももちろんいっぱいあったけど。

 川俣正や國安孝昌のように、実際の風景をフィールドとする作家の場合は、記録写真やエスキースなどが重要な展示物になってくる。そして、展示場所が美術館から抜け出していく割合は、近年どんどん増えている。
 インスタレーションやパフォーマンスは記録しかあとにのこらないのが宿命だ。といって、当時の熱気を残さなくてもいい、ということにはなるまい。展示・収集を第一義とする美術館にとっては、なかなか頭の痛い問題ではないかという気がする。

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